ニュース

NVIDIAフアンCEO、TSMCの競争力を再定義 鍵は先端技術を超える「信頼」

Posted on 2026/03/24



米エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、2026年3月23日に公開された米ポッドキャスト「Lex Fridman Podcast #494」で、TSMCの強みについて「技術力だけでは説明できない」との認識を示した。対談は約2時間25分29秒に及び、フアン氏はTSMCの本質的な競争力として、供給網の調整能力、技術と顧客対応を両立する企業文化、そしてその積み重ねによって形成された「信頼」を挙げた。 
フアン氏の発言で注目されるのは、TSMCの優位性を単なる先端プロセスや製造技術の問題としてではなく、「顧客が事業そのものを託せるか」という関係資本の観点から捉えている点だ。フアン氏は、世界中の顧客需要が絶えず変動するなかでも、TSMCは複雑な要求を調整し、約束した時期にウェハーを確実に納入する能力を備えていると説明した。半導体設計企業にとって、これは製造委託先の選定基準が性能や歩留まりだけではなく、事業計画全体の確実性にまで及んでいることを意味する。 
さらにフアン氏は、TSMCには本来は両立が難しい2つの要素が共存していると指摘した。ひとつは、最先端技術を継続的に押し広げる開発力。もうひとつは、顧客の要求に深く対応するサービス志向である。多くの製造業では、技術優先と顧客対応はしばしばトレードオフの関係になりやすい。だがTSMCはその両方を世界水準で成立させており、その帰結として築いた無形資産が「信頼」だというのがフアン氏の見立てだ。 
実際、フアン氏は対談の中で、自身がTSMCを高く評価する最大の理由はこの信頼関係にあると述べた。30年にわたる協業を通じて、エヌビディアはTSMCと巨額の取引を重ねてきたが、その根底にあるのは、製造委託契約の形式論を超えた長期的な信用だと説明した。この発言は、AI半導体需要の急拡大で先端生産能力の確保が経営課題となるなか、ファウンドリー競争が単なる生産能力の争いから、顧客の将来戦略を支えられるかどうかという段階に移っていることを示唆する。これはフアン氏の発言を踏まえた産業的な読み解きである。 
対談ではもうひとつ、TSMC創業者の張忠謀氏が過去にフアン氏へCEO就任を打診していたこともあらためて確認された。フアン氏は、TSMCを「歴史上もっとも影響力の大きい企業の1つ」と位置づけ、張氏を最も敬愛する経営者の1人だと語ったうえで、最終的には辞退したと説明した。その理由として、当時すでにエヌビディアが将来どのような企業になり得るかを見通しており、自らがその進路を実現する責任を感じていたことを挙げた。 
今回の発言を半導体産業の文脈でみると、TSMCの競争力は「最先端ノードを持つ企業」という従来の理解だけでは不十分だ。AI時代の供給網では、技術革新の速度が速まる一方で、顧客側も製品投入計画や資本配分を、より長い時間軸で設計する必要がある。その際に問われるのは、性能や価格だけでなく、「この会社に自社の未来を預けられるか」という信認である。フアン氏がTSMCの本質を「信頼」という言葉で表現したことは、半導体受託生産の価値基準が、可視化しやすい技術指標から、模倣しにくい関係性と履行能力へ広がっていることを示している。これは公開された対談内容に基づく分析である



Back