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研華(Advantech)、産業AI領域のグローバル展開
Posted on 2026/05/18
劉克振会長「AI競争の主戦場はアプリケーション層へ」
【台北発】産業用コンピューター大手のアドバンテック(研華科技)の劉克振董事長(会長)は、AI産業の競争軸が半導体、AIサーバー、データセンターといった基盤領域から、製造、エネルギー、医療、ロボティクスなど実際の産業応用分野へと移行しているとの認識を示した。その上で、AI産業の最上位に位置する「アプリケーション層」に注力し、世界の産業AIアプリケーション分野におけるリーディング企業を目指す方針を明らかにした。
劉氏は、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが提唱した「AI五層ケーキ(AI Five-Layer Stack)」に触れ、AI産業はエネルギー、半導体、インフラ、モデル、アプリケーションの5層で構成されていると説明。これまで市場の関心はGPUやAIインフラ整備に集中してきたが、今後はAIを実際の産業現場へ実装する応用力こそが、新たな成長の鍵になると指摘した。
アドバンテックはCOMPUTEXで、産業AI向けプラットフォーム「WISE-WEDA」を正式発表する。既存のエッジコンピューティング製品群と統合し、NVIDIA、AMD、Intel、Qualcomm、NXPなど複数のアーキテクチャに対応。AIエージェント、デジタルツイン、リアルタイムエッジAI技術を取り込み、産業用途でのAI導入を加速させる。
ロボティクス分野では、産業用ロボットアーム、自律移動ロボット(AMR)、協働ロボット、ヒューマノイドロボット、産業用ドローン市場を重点領域とする。劉氏は、アドバンテックの役割について「ロボットそのものを作るのではなく、“頭脳と心臓”を提供する」とし、AI演算、画像認識、無線通信、経路計画などの中核技術を通じて市場拡大を図る考えを示した。
グローバル展開も加速する。米国ではカリフォルニア州Tustinに新本社を建設しており、今年10月の稼働を予定。日本では福岡に台湾・中国以外で第3の製造拠点を整備し、2028年第1四半期の稼働を目指す。日本市場向けのDMS(設計・製造受託)およびEMS(電子機器受託製造)需要への対応を強化する。台湾・林口華亜園区でも新製造センターを建設中で、完成後は台湾の生産能力が倍増する見通しだ。
また、世界8地域を軸とする「WWBO(Worldwide Business Organization)」体制を導入し、AIエージェントを活用したサプライチェーンのデジタル化・高度化も進める。受注、製造、物流の最適化を通じ、グローバル競争力を一段と高める構えだ。
AIがデータセンター中心の時代から実際の産業現場へと広がるなか、アドバンテックはグローバル拠点網、産業ノウハウ、ソフト・ハード統合力を武器に、産業AI市場で存在感を強めようとしている。