台湾の工業技術研究院(ITRI)は7月6日、設立53周年記念イベントを開催し、「分野を越えて前進し、新たな未来を共創する(跨域前行・共創新局)」をテーマに、次世代技術戦略を発表した。AIの急速な進展、地政学リスクの高まり、サプライチェーン再編が進む中、ITRIは今後の重点分野として「無人システム」「先進半導体」「AIの産業応用」の3領域を掲げ、台湾産業の高度化と競争力強化を目指す方針を示した。
ITRIは1973年設立の台湾最大級の産業技術研究機関であり、1970年代には米RCAからの半導体技術導入を担い、多くの技術者を育成した。その後、TSMCやUMCをはじめとする台湾半導体産業の発展を支え、現在も産学官を結ぶ研究開発拠点として重要な役割を果たしている。
ITRIの呉政忠董事長は、世界的な技術競争が激化する中、今後は三つの重点領域を先行して整備すると説明した。
第一は無人システムである。ITRIは「台湾無人システム研究開発アライアンス」や台南市の「スマートロボット・イノベーション応用研究開発センター」と連携し、ドローンやスマートロボット産業の高度化を推進するとともに、台湾企業のグローバルサプライチェーン参入を後押しする。
第二は先進半導体である。AIチップ、シリコンフォトニクス、先進パッケージングの研究開発を継続するとともに、経済部の支援の下で「量子産業技術推進オフィス」を設立。半導体分野で培った技術基盤を生かし、「シリコンアイランド」として知られる台湾を、将来的には「クォンタムアイランド」へと発展させる考えを示した。
第三は「AI for All Industries(AI百工百業)」である。製造、流通、医療、文化・クリエイティブ、エネルギーなど幅広い産業へのAI導入を進めるほか、中小企業が保有するデータや計算資源の活用を促進し、産業全体のAI活用を加速していく方針だ。
台湾経済部の何晋滄政務次長は、ITRIは長年にわたり台湾の技術革新と人材育成を支えてきたと評価した。その上で、ロボット、ドローン、低軌道衛星など新興分野では、分野横断的な技術統合が一層重要になると指摘し、ITRIが企業や研究機関との連携を通じて、国際競争力を持つ台湾発の技術・製品を創出することへの期待を示した。
また、ITRIの張培仁院長は、高齢化や人手不足、エネルギー制約、サプライチェーン再編といった世界的課題に対応するため、AIやスマートロボット技術の研究開発を強化していると説明した。さらに、研究開発では市場ニーズを重視し、開発初期段階から顧客との対話を進める「マーケットイン」の考え方を導入していることも明らかにした。
会場では、先進半導体、AI応用、無人システム、スマートロボット、サステナビリティ、スマート医療、人材育成など7分野・15件の研究成果を展示した。ドローン群による災害調査システム、AIを活用した手術器具洗浄ロボット「安心器械パートナー」、AIチップ向け空冷ソリューション「3Dアルミニウム製マイクロチャネル・サーモサイフォン冷却機構」、極低温環境に対応する制御チップ技術など、AI時代を見据えた実用技術が紹介された。