2024年4月、東京で開催されたTCA設立50周年特別企画「2024 Taiwan Semiconductor Day」で講演するPSMC創業者の黄崇仁氏。長年にわたり台湾半導体産業を牽引するとともに、日台の産業交流にも積極的に取り組んだ。(資料写真)
台湾の半導体ファウンドリー、PSMC(Powerchip Semiconductor Manufacturing Corporation/力積電)は8月11日に取締役会を開催し、副董事長を務めていた謝再居氏を新たな董事長に選任した。謝氏はCEOも兼任する。創業者で前董事長の黄崇仁氏が7月末に逝去したことを受けたもので、長年にわたり黄氏とともに事業を支えてきた経営陣が、その技術と事業基盤を引き継ぐ。
黄崇仁氏は、台湾半導体産業の発展を支えてきた代表的な企業家の一人である。1994年にPowerchip Semiconductor(力晶半導体)を創業。DRAM市場の激しい景気変動や経営環境の変化を経験しながらも半導体事業への投資を続け、事業再編を経てファウンドリー事業への転換を進めた。2021年にはPSMCが台湾証券取引所に上場し、新たな成長段階へと進んだ。
黄氏の半導体事業は、日本との関係も深い。Powerchipはメモリ事業を展開する中で、日本のDRAM大手だったElpida Memory(エルピーダメモリ)と技術・事業面で協力関係を築き、日台半導体産業の連携にも関わってきた。近年も黄氏は日台の半導体産業交流に積極的に参加していた。2024年4月には東京で開催されたTaipei Computer Association(TCA/台北市コンピュータ協会)設立50周年特別企画「2024 Taiwan Semiconductor Day」に登壇。当時、日本と台湾の半導体産業が新たな協力局面を迎える中、台湾半導体産業の動向や今後のビジネスについて日本の産業関係者に向けて発信した。
今回、黄氏から経営を引き継ぐ謝再居氏も、PowerchipからPSMCに至る長年の発展を支えてきた人物だ。米University of Cincinnatiで電気工学博士号を取得し、University of Texas at Arlingtonでは電気工学科の准教授兼研究センター長を務めた。その後Powerchipに加わり、先端技術部門、副CEOなどを経て、PSMCでは総経理、副董事長などを歴任。半導体技術の研究開発から経営まで幅広く携わってきた。
黄氏の逝去後、謝氏は董事長およびCEOを代行していたが、今回の取締役会で正式に董事長兼CEOに就任した。長年にわたり黄氏とともに会社の発展に携わり、技術と事業の双方を熟知する謝氏が経営を引き継ぐことで、PSMCは経営と技術戦略の継続性を維持しながら、新たな体制へ移行する。PSMCは現在、ロジック、メモリ、特殊プロセスなどを中心にファウンドリー事業を展開している。世界の半導体産業が構造変化を続け、AIが新たな半導体需要を生み出す中、謝氏率いる新経営体制が、黄氏のもとで築かれた技術と事業基盤をどのように次の成長へつなげていくかが注目される。
PowerchipからPSMCへ――黄崇仁氏は30年以上にわたり、台湾メモリ産業の浮沈、日本企業との協業、そしてファウンドリーへの事業転換という大きな変化の中を歩んできた。その事業を長年にわたりともに支えてきた経営陣が引き継ぐことで、黄氏が築いた半導体事業とその歩みは、新たな経営体制のもとで次のステージへと受け継がれていく。